ぼくたちのリメイク6 アップロード日:9月1日 木緒 なち著 MF文庫J
※内容について触れているので、5巻目まで読まれていない方はご注意願います。
作家になるという夢を断ち、芸大を去ってしまった貫之を連れ戻そうと、ナナコを連れて川越に向かった橋場。
橋場はそこで、家の事情と自分の夢との間で板挟みになっている貫之と向き合うことになります。
大学卒業後ゼロ細ゲーム会社で人生を棒に振った後、10年前に戻り、芸大で高い能力を誇るプロデューサーとして目覚めた橋場。
しかし作品を作るということは、作家やイラストレーターなど多くの人を振り回し、心や人生をかき乱すということでもある。
貫之を取り戻すという行動も、結局は作品を作りたいというエゴを押し付ける行為。
そこに潜む理不尽さに、橋場はしっかりと向き合っています。
作品から読み取れる橋場は、しいていえば「優しいダークヒーロー」。
第4巻までの失敗を踏まえつつ、他人を駒として使う覚悟を固めた橋場が、どういう思いで仲間を取り返していくのかというところにシビれました。
しかも、この巻まではただの大病院の経営者としか描かれていなかった貫之の父親も、重たい使命を抱えている点も注目です。
貫之の存在を必要としていて、芸大に戻すわけにはいかない貫之の父は、容赦なく橋場や貫之に現実や覚悟の有無を突きつけます。
橋場と貫之、そして貫之の父親の3人が信念をぶつけ合っているところに、さながら戦記物を読んでいるような戦慄を覚えました。