私、救世主なんだ。まぁ、一年後には死んでるんだけどね なめこ印著 ファンタジア文庫
罪華という、人の負の感情によって生み出された化け物によって、幼少期に妹を含めた家族を失った少年影山燐が、罪華に対する人類側の切り札として一年後に死ぬ運命を背負った少女神代風花と出会うボーイミーツガール。
「聖墓機関」という人類救済のための機関に属して、罪華と戦う物語です。
とはいえ一年後に死ぬ運命と引き換えに、自由奔放な生活が保障された神代風花が、影山燐を振りまわすところがおもしろい。
このままラブコメ的展開が続いてもいいのに、とすら思わせます。
ですが、ところどころに挟まれる罪華との戦闘の描写が、悲惨な物語世界であることを思い出させてくれます。
しかも、影山燐は属する組織、聖墓機関でも特に強い13人「背神者」の中でもトップの実力を誇っているのですが、その本当の理由があまりにも切ない。
影山燐にとっての仇は、自身の家族だけではないというところを見せつけられました。
ただし、途中で時系列が入れ替わる作品なので、よくよく注意しながら読み進めないと混乱するかもしれません。
注目すべきは罪華との戦闘時、影山燐の相棒となるアネモネという少女。
影山燐と神代風花のラブコメを楽しみつつ、彼女がどんな存在なのかを注視しながら読み進めるべきかなと思いました。
まだ第1巻なので、物語がどう転がるかわからないのですが、今後の展開が楽しみな作品でした。
罪華についてや、登場人物たちが持つ能力について、謎が多いのも見どころです。
『86――エイティシックス』や『探偵はもう死んでいる』並みの展開が期待できます。