ラノベ考察紀

広島在住のラノベ読み。このラノ2022にコメントが掲載されました! おもしろかったラノベをどんどん紹介します。

SICK 私のための怪物  澱介 エイド著  ガガガ文庫

人々が寝るときに見る夢や、空想などを総称した『ゾーン』に現れ、恐怖症を引き起こす化け物『フォビア』。

そんな『フォビア』を、他人の『ゾーン』に入って倒すことを使命とする叶音の物語。

 

女主人公で、サポートするヒロイン役(?)は十歳の小さな男の子という、ライトノベルとしては珍しい作品です。

珍しいながら、叶音と逸流の組み合わせは最高でした。

歳相応に幼く、そしてやんちゃな逸流に叶音が振り回されたり、

親がいない寂しさに泣く逸流を叶音が慰め、手を取り合ったり、

子供らしく柔らかな逸流の頬に、叶音が触って癒されたり。

もはや姉弟関係以上の深い絆で結ばれている様子に、読んでいる側も癒されました。

珍しいという点で終わらず、二人の関係が濃密で、キャラが活かされていて、活躍を追いかけるのが楽しみになります。

じゃれあう二人に本当に癒されました!

……中盤までは。

 

中盤に至るまでところどころにおかしいな、怪しいな、という点がいくつかあったのですが、後半に入るとこの物語の凶暴性が一気に爆発していました。

叶音が人々の『ゾーン』に入り、『フォビア』を討伐する理由。

サポート役の逸流という少年に起きた悲劇。

それらを知ると、この一年で読んだライトノベルの中で、最大級の恐怖を感じさせました。

グロさと、精神を追い詰められていくキツさでいえば、リゼロと遜色ないレベルです。

もはや姉弟と呼んでもいい二人に何が起きたのか、読むとなったら相当な覚悟がいると思います。

正直、受け止めきれませんでした。

軽い気持ちで読むと、絶対にトラウマになります。

 

最後に、叶音のサポート役の逸流について。

読み終えると、かわいいと思っていた男の子にぞっとしました。

物語に登場する逸流は、本当の逸流とは別の存在なのではないか。

では正体は何なのか、考察したい意欲をそそられます。

次巻に期待です。