SICK 私のための怪物 澱介 エイド著 ガガガ文庫
人々が寝るときに見る夢や、空想などを総称した『ゾーン』に現れ、恐怖症を引き起こす化け物『フォビア』。
そんな『フォビア』を、他人の『ゾーン』に入って倒すことを使命とする叶音の物語。
女主人公で、サポートするヒロイン役(?)は十歳の小さな男の子という、ライトノベルとしては珍しい作品です。
珍しいながら、叶音と逸流の組み合わせは最高でした。
歳相応に幼く、そしてやんちゃな逸流に叶音が振り回されたり、
親がいない寂しさに泣く逸流を叶音が慰め、手を取り合ったり、
子供らしく柔らかな逸流の頬に、叶音が触って癒されたり。
もはや姉弟関係以上の深い絆で結ばれている様子に、読んでいる側も癒されました。
珍しいという点で終わらず、二人の関係が濃密で、キャラが活かされていて、活躍を追いかけるのが楽しみになります。
じゃれあう二人に本当に癒されました!
……中盤までは。
中盤に至るまでところどころにおかしいな、怪しいな、という点がいくつかあったのですが、後半に入るとこの物語の凶暴性が一気に爆発していました。
叶音が人々の『ゾーン』に入り、『フォビア』を討伐する理由。
サポート役の逸流という少年に起きた悲劇。
それらを知ると、この一年で読んだライトノベルの中で、最大級の恐怖を感じさせました。
グロさと、精神を追い詰められていくキツさでいえば、リゼロと遜色ないレベルです。
もはや姉弟と呼んでもいい二人に何が起きたのか、読むとなったら相当な覚悟がいると思います。
正直、受け止めきれませんでした。
軽い気持ちで読むと、絶対にトラウマになります。
最後に、叶音のサポート役の逸流について。
読み終えると、かわいいと思っていた男の子にぞっとしました。
物語に登場する逸流は、本当の逸流とは別の存在なのではないか。
では正体は何なのか、考察したい意欲をそそられます。
次巻に期待です。