天使は炭酸しか飲まない 丸深 まろやか著 電撃文庫
タイトルにある天使とは、表紙を飾る柚月湊のことではないのですね。
読んでいてまずそこにびっくりしました。
前置きはさておき、この小説に登場する明石伊緒にはちょっと特殊な能力があって、相手の顔に触れるとその人が思いを寄せている人を知ることができます。
その能力を使って、通っている久世高校の天使として、正体を隠した上で同じ学校の生徒の恋愛相談に乗っているのですが、そんな最中、柚月湊によって伊緒が持つ能力を看破され、彼女の恋愛について相談に乗ることに……
読んでいてちょっとこの伊緒という高校生、いい人すぎない?という印象を(期待を抱きつつ)持ちました。
いくら顔を触れただけでその人の好きな人を見抜けるといっても、それを自分の都合がいいように使うのではなく、相談相手の恋愛がうまくいくよう、きちんと告白できるように動く。
しかも対価なし。完全にボランティア。
都合よすぎでは?と思ったのですが、読み進めるときちんと腑に落ちました。
伊緒は自身の持つ過去から、このような天使としての活動をしているのであって、そのことが丁寧に描写されていました。
たとえ相手が自分のことを好きでなくても、告白しないでいい、伝えないでいい思いなんてありえない。
そんな伊緒のあり方に共感できます。
そして、そんな伊緒に恋愛相談を持ちかける柚月湊。
久世高校三大美女のひとりとされるほどの彼女が持つ、ちょっと変わった恋愛の悩みの原因を、伊緒がどう見抜いて解決していくか。
気になりながら読み進めていきましたが、彼女の背景を知って謎が明らかになると、うるっとなりました。
伊緒と湊、それぞれが持つ過去と折り合いをつけ、奮闘する一冊。
おすすめです。