わたしはあなたの涙になりたい 四季大輔著 ガガガ文庫
塩化病という、体が末端部分から徐々に塩になっていき、最終的に全身が塩になって死亡してしまうという病で母親を失った少年の物語です。
その後の天才ピアニストの少女との出会いが、少年の人生を大きく変えていくことになるのですが……。
感動作でした。
生き続けていく人に何ができるのか、ということをひたすら問う内容になっています。
舞台が福島であることもあって、3.11の東北大震災が出てきますし、さらには第二次世界大戦のドイツ軍により荒廃したワルシャワの歴史も出てきたりと、ラノベとは思えないほど重たいテーマを扱っているのですが、これがこの作品の肝です。
福島が地元というだけで、放射線がらみの風評被害を受けるだけでなく、大災害の被害者というレッテルを一方的に貼られる葛藤がこれでもかと描かれています。
何かを伝えるという行為はちょっと怖いですよね。
大災害や戦争で亡くなった方のことや、自分自身の抱える身体障碍について、他人に伝えるという行為。
それは、多くの人に感動を与えると同時に、ただのテレビドラマみたいに体験を大衆に消費されるという結果になります。
それでも伝え続けることの意義は何か。
この物語は問いかけてきます。
わたしはあなたの涙になりたい、というタイトルも、きちんと意味があって、それがわかったとき、つい泣きそうになりました。